アスペルガー症候群と自閉症スペクトラムの違いは?

アスペルガー症候群と自閉症スペクトラムの違いは?

アスペルガー症候群は、オーストリアの小児科医であるハンス・アスペルガーが人間関係がうまく築けない4人の子どもの症例を研究し、報告したのが始まりといわれています。

その後、アスペルガーの報告はあまり注目されていなかったのですが、1980年代になってから、イギリスの児童精神科医であるローナ・ウィングによって再発見され「アスペルガー症候群」と呼ばれるようになりました。

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近年まで、アスペルガー症候群と自閉症についての違いや共通点について、多くの専門家によって研究されてきています。

アスペルガー症候群と自閉症スペクトラムの違いは?

アスペルガー症候群は、自閉症と特徴が似ているのですが、言葉の遅れがなかったり、知的な遅れがみられない点において自閉症と違います。「知的障害をともなわない」という点においては、アスペルガー症候群は高機能自閉症と非常によく似ているといえます。

アスペルガー症候群と自閉症スペクトラムってどう違うの?という疑問を持っている人も少なくないみたいですが、アスペルガー症候群は、自閉症を中心とした「自閉症スペクトラム」含まれる障害です。

自閉症スペクトラムとは、自閉症障害の連続体という意味です。自閉症や高機能自閉症、アスペルガー症候群は、自閉症スペクトラムに含まれる、という関係になります。

犬に例えるなら、チワワもポメラニアンも「犬」に含まれる、みたいな捉え方をすれば理解しやすいかと思います。

アスペルガー症候群の特徴

アスペルガー症候群の子どもは、言葉が達者で話好きだったりすることも多く、コミュニケーション上の問題は表面的にはないように誤解されやすいのですが、実際は社会性の困難が生じます。

人と会話をするのですが、状況や場面に応じて空気を読んだり、相手の気持ちを考えずに一方的に話し続けたり、相手を傷つけてしまう失礼な言葉を口にしてしまうこともあります。

そういう意味では、アスペルガー症候群は、人との対話が成り立たないことが多く、「ことば」をコミュニケーションの手段としてうまく使うことができない障害です。そのため、意思疎通や人間関係を築くという点において困難があります。

また、アスペルガー症候群は、自閉症と同じように、興味や関心の対象が狭く、強いこだわりがみられます。こうしたことから、アスペルガー症候群は自閉症スペクトラムの中でも特殊な位置付けがされています。

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アスペルガー症候群と高機能自閉症の区別は難しい

アスペルガー症候群と自閉症の違いや共通点については、多くの研究者が研究してきていますが、両者の違いに関しては、研究者によって報告内容が異なってしまうのが現状です。

特に、ともに知的障害がないとされる「アスペルガー症候群」と「高機能自閉症」の違いについては、専門家であっても判断することが難しいとされていて、専門医であっても診断に迷うことがあります。

実際、アスペルガー症候群と診断されるまでに時間がかかったり、若いときに統合失調症と診断された人が後になってアスペルガー症候群と判明することもあります。

アスペルガー症候群と高機能自閉症の違いと共通点

まず、アスペルガー症候群と高機能自閉症の共通点について。

【共通点】
・人も気持ちが理解できない
・マイペース
・周囲からからかわれたり、いじめの対象になりやすい
・機械類に興味を抱くことが多い
・思春期以降に様々な症状が目立つようになる
・成人してからも協調性に欠ける
・社会的ひきこもりになるケースも
・芸術面や研究面で才能を発揮することも

次に、アスペルガー症候群と高機能自閉症の違いについて。

【違い】
・コミュニケーション上の問題について、アスペルガー症候群は表面的にはないが、高機能自閉症ではある
・学業成績については、アスペルガー症候群は優秀なケースが多く、高機能自閉症は特定の教科で才能を発揮することがある

高い知能指数IQを持つケースも

アスペルガー症候群は、知的障害をともなわない発達障害ですが、中には知能指数IQが平均よりも高い子どももいます。

「サヴァン症候群」といって、文字、記号、数字などに興味を持ち、短時間で膨大な種類の文字や数字を正確に記憶するケースもあります。

また、アスペルガー症候群の子どもの中には、小学校のころから成績が良く、一流大学に進学し、専門的な学問を修め、トップクラスの成績で卒業する、といった学習面で優秀なケースもあります。

こういったケースでは「成績優秀なのに障害があるはずがない」と誤解されることが多く、アスペルガー症候群の存在にまわりの人がいつまでたっても気づかない、ということも少なくありません。

その後、会社に就職して仕事をするようになってから、職場の人との人間関係において問題やトラブルが絶えず、社会性の困難が目立つようになり、精神的ストレスがたまって抱えてしまうようになります。

◆この記事は、元東京大学医学部附属病院小児科医長、お茶の水女子大学大学院教授の榊原洋一執筆・監修「ササッとわかるアスペルガー症候群との接し方(講談社)」の内容を元に、当サイト運営事務局の心理カウンセラーが記事編集をしています。

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