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統合失調症の発病は脳内物質の異常?ドーパミン/GABA/グルタミン酸
統合失調症(精神分裂病)の発病/発症には、脳内物質の異常が原因ではないかと考えられています。
統合失調症の発症に関係しているといわれている脳内物質には、ドーパミン、グルタミン酸、GABA、脳由来神経栄養因子などがあり、それぞれの脳内物質に効果のある治療薬の研究も進められています。
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ドーパミンの過剰が統合失調症の発症原因に?
覚醒剤(アンフェタミン・メタンフェタミン)や麻薬コカインは、統合失調症の急性期の症状と同じような幻覚や妄想を引き起こす作用があります。
覚醒剤は脳内物質ドーパミンを放出することから、統合失調症患者の脳内でもドーパミンが過剰となっているのではないか、と考えられています。
現在、統合失調症の薬物治療で使われることが多い抗精神病薬は、神経細胞のつなぎ目のシナプスでドーパミンを受け取る受容体の働きを抑えて、幻覚や妄想などの陽生症状を軽くする作用を利用したもので「ドーパミン拮抗薬」と呼ばれています。
ドーパミン仮説とは?
そもそもドーパミンは「注意すべきもの」「気にすべきもの」があるときに放出される脳内物質と考えられています。
ドーパミン過剰になると、過覚醒(気になってしまう)、知覚過敏などの症状があらわれ、さらに過剰になると幻覚や妄想になるのではないか、というのが統合失調症の「ドーパミン仮説」です。
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ドーパミンが過剰に放出される
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気にしなくていいものが気になる「過覚醒」
幻覚や幻聴、妄想があらわれる
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抗精神病薬を服用
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神経細胞間のドーパミン伝達をブロック
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幻覚や妄想が改善する
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統合失調症の陽性症状にドーパミンの過剰が関係している
グルタミン酸やGABAの異常も統合失調症の症状に関係している?
昔、麻酔薬として使われていましたが今では使用が禁止されているフェンサイクリジンも、使用を続けていると統合失調症と同じような陽生症状・陰性症状を引き起こします。
フェンサイクリジンには、グルタミン酸という神経伝達物質を神経細胞に取り組む受容体を遮断する作用があります。
このことからグルタミン酸の伝達異常が統合失調症の原因となるのではないかという「グルタミン酸仮説」が生まれました。
ドーパミン仮説よりも新しい仮説ですが、まだこの仮説に基づく抗精神病薬は市販されていませんが、研究開発は盛んに行われており、実用化までもう一歩というところまできています。
また、神経伝達物質のひとつGABA(γーアミノ酪酸)は、グルタミン酸とは反対に神経細胞の活動をおさえる作用があります。
統合失調症患者の脳を調べたところ、前頭葉のGABA系神経細胞のうち、特定の細胞が減少していることがわかり、原因のひとつとして「脳由来神経栄養因子(BDNF)」という物質が減ることではないかといわれています。
グルタミン酸やGABAの作用に異常が起こり、前頭葉がうまく活動しなくなると、ドーパミン異常が起こり、認知機能障害や幻覚、妄想などの症状が出るのではないか、と考えらています。
◆この記事は、国立精神・神経医療研究センター神経研究所疾病研究第三部部長である功刀浩先生執筆・監修の「図解やさしくわかる統合失調症(ナツメ社)」の内容を元に、当サイト事務局の心理カウンセラーが記事編集を行っています。
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