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統合失調症の患者への言葉がけについて|症状別の適切な対応ポイント
家族や周りの人が統合失調症の人に対して適切に対応することは、病気の回復や症状の改善へとつながります。
統合失調症の人との接し方で重要なポイントになるのは、否定的や批判的な態度にならないこと、また逆に本人の言いなりにならないことです。
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妄想や幻覚、幻聴など陽性症状への家族の対応について
統合失調症の代表的な症状でもある妄想・幻覚・幻聴などの陽性症状があらわれているとき、患者本人は「みんなが自分の噂をしている」「命令される」などと言ったりすることがあります。
周りにいる家族にとっては「そんな声は聞こえない」と否定したり「勘違いだ」と間違っていることを論理的に説得したくなるものです。
ですが、統合失調症の症状を否定して本人を説得させようとすることは、病気の状態を改善させるよりも症状を悪化させてしまうことの方が多いので注意しましょう。
統合失調症の患者本人にとって、幻覚が見えたり幻聴が聞こえたりするのは事実です。
その本人のつらい気持ちを家族が理解し、受け入れることが適切な対応につながります。
適切な言葉かけについて|妄想・幻覚・幻聴などの陽性症状
具体的に、統合失調症の幻覚や幻聴、妄想などの陽性症状にはどんな言葉かけや対応が望ましいのでしょうか。
例えば「そんな声が聞こえるんだね」「どんな風に聞こえるの?」と本人に質問して聞いてみるのもよいでしょう。
幻聴や妄想について本人に話してもらい、家族も一緒に共有します。
ただし、幻聴や妄想そのものを肯定するわけでもな句、否定するわけでもない対応が重要です。
「そんな声が聞こえるならつらいね」と伝え、薬を飲んで少し神経を休ませようという方向に持っていくとよいでしょう。
人は誰でも、緊張・孤独・不眠・疲労などが高まると、誰でも幻聴が聞こえるようになるとも言われています。
統合失調症の患者本人が幻聴症状を訴えるということは、同じように緊張や不眠、疲労がたまっている苦しみなのかもしれません。
家族は統合失調症の患者本人がゆっくりと休息できるように、安心してリラックスできる家庭環境をつくり、「私は一人じゃない。家族は味方だ」と思えるようにしてあげることが大切です。
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統合失調症の陰性症状への家族の対応について
また、統合失調症の症状として、幻覚や幻聴、妄想などの陽性症状の後には、やる気が出ない、気分が落ち込む、何事にも興味がない、寝てばかりいる、部屋にこもるなどの陰性症状があらわれます。
そうした陰性症状があらわれてくると、何にも興味を示さない、やる気がない本人の姿を見て、家族はイライラしたりもどかしくなってしまうものです。
陰性症状に対して批判的な対応はよくありませんが、逆にあれこれ世話を焼きすぎたり、何でも本人の言いなりになってしまうこともよくありません。
過保護も過干渉も、統合失調症の本人に対して家族が自分たちの感情をぶつけてしまうことになり、ストレスに感じてしまうので気をつけましょう。
陰性症状への言葉かけについて
統合失調症の陰性症状が強くあらわれ、気分が落ち込んでいるようなときは、家族はあまり多く言葉がけをしないようにして「あせらなくてもいい」ことを本人い伝わるような対応が望まれます。
服薬管理や部屋の片付けなど、本人が自分でできることはできるだけ自分でやらせるようにして、あれこれ世話を焼きすぎないようにしましょう。
また、統合失調症の人は自信喪失していることが多いので、日常生活の中でいいところを褒めてあげる接し方がよいでしょう。
「こんなことはできて当たり前」ではなく「よくできたね」という家族の接し方が本人の自信回復につながります。
統合失調症の人が、自分で少しずつできるようになり、意欲を取り戻して、表情も無表情から生き生きとした表情にかわることがよくあります。
自分でできることがさせ、家庭の中でも役割を与え、できたらほめる、という対応を根気強く続けることが大切です。
統合失調症の対応まとめ|陽性症状と陰性症状への言葉かけ
【陽性症状】
・幻覚や妄想、幻聴は肯定も否定もせずに受け入れ、本人の気持ちを落ち着かせる
・そんな声は聞こえない、勘違いだ、などと否定したり批判的にならないように気をつける
【陰性症状】
・あせらなくてもいい、と本人に伝わるように対応する
・自信回復のためにつながる言葉かけをする
・言葉かけは多すぎないように、自分でできることは自分でさせる
・ほめたり、感謝を伝えたりする
◆この記事は、国立精神・神経医療研究センター神経研究所疾病研究第三部部長である功刀浩先生執筆・監修の「図解やさしくわかる統合失調症(ナツメ社)」の内容を元に、当事務局の心理カウンセラーが記事編集を行っています。
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