自閉症の診断基準について(DSM-Ⅳ-TR)

自閉症の診断基準について(DSM-Ⅳ-TR)

自閉症といっても実は様々なパターンやタイプがあり、特徴(症状)の現れ方にも個人差があります。

そこで今回は、自閉症の診断基準、診断された時の注意点、自閉症と診断されないケース等についてポイントをまとめてみたいと思います。

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日本での自閉症の診断基準は?

日本国内において、自閉症の診断基準として主に使用されているのは、アメリカ精神医学会による「DSM-Ⅳ-TR 精神疾患の分類と診断の手引き」です。

子どもが自閉症かどうかの判断は、医師の診察時の問診、子どもの様子の観察、心理テスト結果など、総合的に勘案して自閉症の可能性が高いと判断した際に、診断基準に照らし合わせ、診断基準の項目を満たしているかどうかを最終的に確認して診断していきます。

※DSM-Ⅳ-TRの自閉症の診断基準については記事の一番最後に載せておきますので参考にどうぞ。

自閉症という診断名(障害名)にとらわれないように注意

病院で医師の診察を受けて診断をするということは「障害名を特定すること」です。

しかし、親や家族など周りの人は、「自閉症」という診断名、障害名にとらわれすぎないことが大切になります。

自閉症とひと言で言っても、行動特性(症状)の現れ方には個人差があり、例えば知的障害があり言葉を話さない子もいれば、小学校では通常学級に在籍していて普段は自閉症のように見えないがときどきパニックを起こしてしまうという自閉症の子もいます。

「自閉症」と診断された子どもに対して、多くの人は一定のイメージを持って、つまり「自閉症というレッテル」を貼ってしまい、固定観念を持って子どものことを見るようになってしまいます。

その結果、本当の子どもの姿、自閉症の子どもの本質を見失ってしまうことも少なくありません。

同じ自閉症という発達障害に診断されても、こだわり強い子そうでない子、コミュニケーションが苦手な子そうでない子感覚過敏な子や鈍麻な子など、自閉症にも様々な種類やパターンがあります。

ひとりひとりがどんな特性があるのか、何に困っているのか、どのような支援が必要なのか、適切に対応していくことが望まれます。

自閉症と診断されないケースも

病院を受診して医師の診察を受けたけれど、すぐに診断できなかったり、自閉傾向があっても自閉症とは診断されないケースもあります。

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すぐには診断できないケースでは、その後も定期的に受診して子どもの様子の経過観察を続けることが望まれます。何回か診察を続けていく中で、医師の子どものへの理解がより深まり、正確な診断につながっていきます。

また、自閉傾向があるけど自閉症とは診断されなかった場合、「自閉症じゃなくて良かった」と安心してしまい、何も対応や支援をしない、というのはあまりよい対応とはいえません。

自閉症と診断されなかったとしても、子どもが支援を必要としているのであれば、日常生活においてサポートすることが望まれます。

病院を受診しようと思ったきっかけは存在するはずです。子どもが自閉症と診断されるかどうかにとらわれず、日ごろ子どもがかかえている問題を解決するために、相談機関を紹介してもらったりすることも大切です。

自閉症の診断基準(DSM-Ⅳ-TR)

【A】1、2、3から6項目以上、1からは少なくとも2つ、2、3からは少なくとも1つ該当すること

1.対人関係における質的な不適応:下記から少なくとも2つ:
(a).目線を合わせる、顔の表情、体の姿勢、身振り、社会性を保持するための動作などといった様々な非言語的行動の著明な障害
(b).同年代の定型発達児との関係性の障害
(c) .他人と楽しみ、興味、業績(見せる、持ってくる、興味のあるものを指し示すなど)の自発的共有の欠如
(d).対人的、感情的相互性の共有の欠如

2. コミュニケーションの質的欠如:下記において少なくとも一つは障害がある:
(a).話し言葉の遅れ、欠如(仕草や模倣のコミュニケーションを通じて代償しよう とすることは伴わない)
(b).適切な言語能力をもった個人で、他人との会話の開始と継続の著明な障害
(c).常同的で繰り返しの言語の使用や独特の言語
(d).発達にあった様々な自発的ごっこ遊びや社会性のあるモノマネ遊びがない

3.限定された繰り返しやパターン化された行動や興味、活動:少なくとも下記から一つは障害がある:
(a).対象においては、1つかそれ以上の常同的で限定された興味に没頭する
(b).特定の非機能的または儀式的な、強固な物事への固執
(c).常同的で定型的な運動マンネリズム(手、指をひらひらさせる、ねじる、複雑な体の動き)
(d). 物の一部に対する強度の固執

B.少なくとも3歳以上で下記の少なくとも1つに遅れや異常がある:
(1).対人関係
(2).対人コミュニケーションとして使用する言語
(3).人形や 想像遊び

C. レット障害または小児期崩壊性障害ではうまく説明されない
※)レット障害とは4歳以前にわかる知的障害。頭が小さく、歩行が困難になる。
小児期崩壊性障害とは、生後数年間は通常の発達を示した後、自閉症症状が出てくるまれなタイプの障害。

◆この記事は、お茶の水女子大学大学院教授である榊原洋一先生執筆・監修「図解よくわかる発達障害の子どもたち(ナツメ社)」の内容に基づいて、当サイト運営事務局の心理カウンセラーが記事編集をしています。

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