ADHDの予後とトークンエコノミーによる行動療法について

ADHDの予後とトークンエコノミーによる行動療法について

ADHDの治療は、コンサータなどの薬の服用に並行して、行動療法を行って適切な行動がとれるように導いていくアプローチが基本的です。

そこで今回は、ADHDの予後とトークンエコノミーによる行動療法について、ポイントをまとめてみたいと思います。

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トークンエコノミーによる行動療法とは?

トークンエコノミーとは、行動療法のひとつです。ADHDなど発達障害の子どもが適切な行動がとれたときに「トークン(ポイント)」を与えて、トークンがたまったら具体的なごほうびと交換できるようにすることで、適応行動を促す方法です。

トークンエコノミーのメリット(利点)は、ADHDの子ども本人にもわかりやすく、適応行動をとりやすくなる点です。また、不適切な行動に対しても叱るのではなく、減点という対応をとることができ、子供の自尊心を損なうことがないこともメリットといえます。

ごほうびの具体例としては、「100点たまるとゲームを30分してもいい」「50点以上たまったら、おやつをひとつ増やす」などもいいでしょう。

行動療法はADHDに有効

薬を使用したADHDの治療は、日常生活における困難を一時的に解消する上で有効ですが、そのアプローチだけでは、不適応行動が適切な行動に変わっていくわけではありません。

最終的には、薬の効果に頼らずとも、自分で行動や感情をコントロールできるようになることが目標です。そのためには、問題行動をADHD本人に自覚させること、適切な行動へと変えていく練習を繰り返すことが必要です。

そこで有効な学習方法が、行動療法によるアプローチです。

行動療法とは?

行動療法の基本的な考え方は、不適応行動をとったときは、きびしずぎない程度の罰(ごほうびのおあずけ等)を与え、適応行動ができたときは、ほめる、ごほうびをあげる、などの対応をして、少しずつ適切な行動がとれるように導いていきます。

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ADHDの子供が失敗やミスをしても、あえてあまり働きかけずに、うまくできたとき、好ましい行動がとれたときにたっぷりとほめて「プラスの強化」を与えることがポイントです。

ADHDの子どもは、自分で適切な行動をすることができなくても、繰り返しほめられているうちに、徐々にほめてもらえるような行動をとろうとするようになります。

行動療法の効果は時間がかかるため、親や教師など指導する側は、長い目でADHDの子どもの成長を見守る姿勢が求められます。根気良く行動療法を続けることで、ADHDの子どもの行動は変化していきます。

環境改善もADHDに有効

ADHDの問題行動を改善するために、環境改善による対応も有効です。

ADHDの子どもは、様々な情報の中から必要なものを選択したり、自分に注意を適切な対象に向けたり、作業や課題を集中して取り組むことが苦手です。そうしたADHDの特性に対して、注意を向けやすくしたり、集中しやすくするために、環境を整えるサポートも有効です。

例えば、学校の教室では、ADHDの子どもの席は、最前列の中央の席が望ましいといわれています。窓の外の景色や音に気をとられることもなく、また周囲の子どもが視界に入らないからです。

家庭では、勉強するときにはTVや音楽は消して、他の兄弟がいるときは別の部屋に移動し、学習に関係のない物はできるだけ机の周りに置かないようにしましょう。

ADHDの子どもが集中しやすい環境を整えることで、作業や課題に取り組みやすくなります。

不注意よりも多動性は改善しやすい

ADHD特有の脳機能の偏りを治すことはできませんが、薬物治療や行動療法、環境改善などのサポートを続けていくことで、 ADHDの子どもの問題行動は徐々に減り、社会への適応力が向上していきます。

ADHDの特徴の中でも「多動性」「衝動性」は、子供が成長して年齢を重ねていくにつれ、症状が改善していく傾向があります。ただ、「不注意」の症状に関しては、大人になってからも特性を持ち続けるケースが比較的多いといわれています。

そのため、ADHDの子供が成長して大人になると、ADD(注意欠陥障害)と診断名が変わることもあります。

◆この記事は、東京都杉並区立済美教育センター指導教授、早稲田大学大学院教育学部教職研究科非常勤講師、月森久江先生執筆・監修「ADHD LDがある子どもを育てる本(講談社)」の内容を元に、当サイト運営事務局の心理カウンセラーが記事編集をしています。

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