【自閉症の治療と予後】療育の方法、やり方について

【自閉症の治療と予後】療育の方法、やり方について

自閉症は脳機能の特異が原因であるため、手術や薬などの治療で治せるものではありません。

そのため、自閉症の治療は「療育」を中心に行い、自閉症の子どもの考え方や行動を望ましい方向へと変えていく治療方法が行われるのが一般的です。

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療育による指導や訓練を積み重ねることで、自閉症の子どもの生活や精神状態も安定し、社会に適応するスキルを身につけていくことも期待できます。

自閉症の治療の中心は「療育」

自閉症の治療の中心は「療育」です。

療育とは、治療教育ともいい、子どもが日常生活の中で感じている問題や困難を軽減し、状況の適した行動がとれるようになるために行う教育的援助の方法です。

【自閉症の療育の方法】
①行動療法
②構造化
③感覚統合訓練

自閉症の療育の中心となるこれらの3つの方法について、ポイントをまとめてみたいと思います。

自閉症の療育①「行動療法」

自閉症の療育方法のひとつとして行われる行動療法とは、好ましくない行動(パニックや自傷行為、不適応な行動など)を好ましい行動(適応行動)へと変化を促すアプローチ方法です。

行動療法のポイント

①問題行動をしても、叱ったり罰を与えない
②問題行動を起こす原因がわかっている場合には、その原因を取り除く
③好ましい行動をほめたり、ご褒美を与えることで適応行動を促す。

行動療法では、自閉症の子ども本人がほめられたと実感できるような効果的な手段を用いることが大切です。

行動療法の特徴と効果

①具体的な行動に対して働きかける方法なので、実用性が高く、結果が形になりやすい
②自傷行為やかんしゃく、パニックなどの問題行動を改善させるのに効果がある
③ひとつひとつの具体的な行動に対する治療法なので、別の行動への応用は利かない

自閉症の療育②「構造化」

自閉症の療育としておこなわれる「構造化」とは、情報の取捨選択がうまくできない自閉症の子どもに対して、必要な情報だけに注意を向けることができるように、不要な情報を遮断させる環境をつくるアプローチです。

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空間の構造化(方法・やり方)

・部屋、場所、机ごとに、そこで行う作業を決める
(食事・勉強・作業・絵を描く場所を別々にするなど)

・勉強に集中できるように、周りの他の刺激となるものを取り除く
(机のまわりについたてを立てる・壁の掲示物などを貼らない・テレビや外の音が聞こえないようにするなど)

時間の構造化(方法・やり方)

1日の時間割、1週間のスケジュール(曜日ごと)、1ヶ月のスケジュールを作成し、壁に貼るなど一目で見てわかるようにする。

手順の構造化(方法・やり方)

・課題や作業を具体的な細かいステップに分け、ひとつ完了したら次のステップに進めるように段階的にする。また文字だけでなく、絵や図などを活用して、何をどのようにやるのか表すと良い。

・完了したステップが積み上げていけるように、目で確認できるようにする。例えば、終わったプリントを一枚一枚積み上げていく、1ページ終わるごとにシールを貼る、など。

自閉症の療育③「感覚統合訓練」

感覚統合とは、音や光、におい、皮膚への刺激など、五感(視覚・聴覚・味覚・嗅覚・身体感覚)で感じる刺激をどのように認識し、またその刺激情報に対してどう反応し、こうどうすればよいのかを指示する脳の働きの意味です。

この感覚統合の働きが不十分だと、感覚過敏や感覚鈍磨になったり、落ち着きがなくなったり、不器用になったり、言葉の発達に遅れが生じたりするといわれています。

感覚統合訓練の方法・やり方

・手指の細かい動きや目と手の協調運動を促す(コマ回しや折り紙、あやとり、けん玉などの昔遊び)
・音楽にあわせて体を動かす(リトミックなど)
・体の複数の部分を同時に使う動きで感覚統合を養う(三輪車や自転車、ボール遊び、水泳などの全身を使う協調運動)

感覚統合訓練のポイント

・失敗をできるだけ経験させないこと
・成功できるように、低いハードルからスタートさせる
・「できた」という達成感を子どもに味わわさせること
・成功できたらしっかりとほめて、次への意欲やる気を引き出すこと

◆この記事は、お茶の水女子大学大学院教授である榊原洋一先生執筆・監修「図解よくわかる発達障害の子どもたち(ナツメ社)」の内容に基づいて、当サイト運営事務局の心理カウンセラーが記事編集をしています。

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